太陽表面の爆発現象によって放出される中性子およびガンマ線の観測は、太陽での荷電粒子加速だけでなく、銀河宇宙線の加速機構を解明する上でも重要な意味を持つ。本研究は、粒子加速の統一描像の解明を目指し、太陽近傍での太陽中性子・ガンマ線観測を目的とした太陽中性子・ガンマ線検出器の基礎開発研究を行った。 今年度の研究では、検出器内での中性子およびガンマ線の様子についてシミュレーションを行い、検出器応答を求めた。その結果、線源を用いた実験を再現することを明らかにした。また、中性子・ガンマ線スペクトル解析のための解析ツールの開発を行った。本研究で開発を行っている検出器は、中性子とガンマ線を1台の検出器で同時観測する。そのため、得られた1つのエネルギースペクトルから、中性子とガンマ線を同定・分離し解析を行う必要がある。この開発に対し、月探査衛星「かぐや」に搭載されたガンマ線分光計で得られた月面からのガンマ線および中性子の実際の観測データを用い、エネルギースペクトル上に現れるガンマ線および中性子の特徴的なピークの同時解析を行った。その結果、「かぐや」や他の月探査衛星で得られた結果とほぼ一致した結果が得られ、同一検出器で同時に観測された中性子・ガンマ線の観測データから同時解析によりそれぞれのデータが得られることを明らかにした。 本研究により、中性子・ガンマ線を同一検出器による同時観測およびその解析が可能であることが明らかにされた。
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