研究課題
1.超弦理論や超重力理論ではDブレーンやMブレーンといった基本的な物体を含み、中でも複数のブレーンが高次元時空上で互いに交差する交差ブレーンと呼ばれる系の動力学ついて素粒子論や宇宙論で議論されてきた。これまでの超重力理論における交差ブレーンの時間依存解の研究は主として一方のブレーンが他方のブレーンに局在していない場合について行われ、Einstein方程式の厳密解の分類等が進められた。このような状況を踏まえ、本研究では2つのブレーンが存在する系に注目し、一方のブレーンが他方に局在する交差ブレーンの時間発展についてEinstein方程式の時間依存解をもとに解析を行った。まず任意次元での様々な交差ブレーンの時間依存解について調べた結果、Einstein方程式の解の特徴として、時間依存性が計量の湾曲因子に現れることが分かった。また、背景に宇宙定数を導入しない限り4次元時空は加速膨張しないことが明らかとなった。更に11次元及び10次元II型超重力理論の時間依存解に関しても上記と同様な結果が得られた。2.de Sitterコンパクト化は我々の住む4次元時空が加速膨張を起こすことから宇宙論的な観測結果と矛盾しない宇宙模型を与える解として高次元理論では古くから注目を集めている。現在のところ高次元重力理論で4次元de Sitter時空と有限な体積を持つ内部空間を同時にもたらすコンパクト化の例は少ない。その理由はde Sitterコンパクト化に関するNO-GO定理が重力理論に存在するからである。本研究では背景に重力場、ゲージ場、スカラー場を含み高次曲率項が存在しない高次元重力理論に注目し、4次元時空が加速膨張する解を追求した。その結果、スカラーポテンシャルが正の値を持つとき、内部空間の体積が有限で4次元が加速膨張する時空を示す解を得ることに成功した。更に低次元有効理論について解析すると内部空間の大きさが固定され現在の宇宙の加速膨張を再現する宇宙模型を構築することが出来た。また背景に含まれるパラメーターを適当に選ぶことで内部空間のスケールを表すモジュライ場が宇宙の暗黒エネルギーの候補となり得ることが分かった.
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