研究概要 |
2008年度は, 修正重力理論における暗黒エネルギーの構築と, その観測的な兆候に関する研究を主に行った. 特仁, スカラーテンソル理論に基づく宇宙の大規模構造のスペクトラム, さらに重力レンズにおけるスペクトラムに関する詳細な研究を行い, 小さなスケールにおいて修正重力の効果により, 揺らぎの振幅が増幅されることを見いだした. この成果は, 立川氏との共著の論文にまとめており, Physics Letters B誌に出版された. また, イタリアにおけるWinter Schoolに, 修正重力理論の講義の招待講師として招かれ, 上記の研究成果を中心に, 5日間の集中講義と研究発表を行った. 修正重力理論においては, 宇宙の加速膨張は可能でも, 一般に局所重力の実験の制限を満たすことは難しい. 我々は, カメレオン機構と呼ばれる機構により, 星の内部でスカラー場が重い質量をもつことで, 局所重力の実験の制限を満たすことができることを示した. 従来の解析では, 星の内部におけるスカラー場の値に関して, 近似的な解しか求められていなかったが, スカラー場のポテンシャルの極大値付近での振る舞いと境界条件を正確に議論することで, スカラー場の分布と物質との結合め強さについて, 解析的な解を求めることに成功した. この成果は, 玉置氏との共著論文にまとめられており, Physical Review D誌に出版された. 上記の研究以外にも, 宇宙初期のインフレーション期における原子磁場の生塵を, 一般的なインフレーション模型に対して調べ, 銀河規模のスケールで生成される磁場の振幅について, 解析的な評価を与えた. これは, Dirac-Born-Infeld理論をも含む解析であり, ほとんどのインフレーション模型に適用できるという意味で, 非常に一般的である. この成果は, 馬場氏と太田氏と共同でまとめ, Physical Review D誌に出版された.
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