| 研究概要 |
本年度は,最も一般的なスカラーテンソル理論に基づく暗黒エネルギー模型に関する研究を,主に行った.特に,そのような理論を暗黒エネルギーに適用した際の有効性の条件を明らかにした.この研究により,ゴーストや不安定性のような問題点をもたないための条件が求められ,有効な模型を絞り込む上で重要な貢献をしたと考えられる.さらに,同じ理論において,物質揺らぎと重力ポテンシャルが従う式を一般的に導出し,これは,宇宙の大規模構造,重力レンズ,宇宙背景輻射などの観測から模型に制限をつけるという観点から,模型の選別に重要な役割を果たす.特に,銀河の特異速度から制限される物質揺らぎの成長率によって,いくつかの暗黒エネルギー模型を棄却することができることを示した.また,太陽系のような宇宙の局所領域においては,重力実験との整合性から,一般相対論的な特徴を回復する必要があるが,我々は,ヴァインシュタイン機構と呼ばれる機構がどのように働くかを,一般的なスカラーテンソル理論において調べた.これにより,一般相対論的な振る舞いを回復するような半径を導出した.
上記の研究内容は,暗黒エネルギーの状態方程式の変化だけでは選別がつかないような模型の間の選別を可能にするものであり,暗黒エネルギーの起源の探究のために重要な寄与を与えたと考えられる.特に我々が導出した,宇宙論的スケールで時間変化する重力結合の強さに関する結果は,宇宙論的密度揺らぎの進化を決める重要な情報であり,宇宙項模型と修正重力理論による模型を観測的に区別する上で極めて重要な役割を果たすことが期待される.
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