研究概要 |
重いクォークと反クォーク間の束縛状態であるクォーコニウムの諸性質を明らかにすることを目的として, 量子色力学(QCD)の有効場の理論であるpNRQCD(potential nonrelativistic QCD)と格子QCD数値シミュレーションを用いて, 非摂動論的に重いクォークと反クォーク間のポテンシャルを調べた。 本年度は特に, pNRQCDにおけるクォーク間ポテンシャルに対する0(1/m)の相対論的補正項, 0(1/m^2)のスピンに依存する相対論的補正項, 0(1/m^2)の運動量に依存する相対論的補正項を長距離1.2fmまで精密に調べた。これにより, これら相対論的補正項に対する非摂動論的な寄与を定量的に確認した。0(1/m)の補正項は長距離で対数関数的振る舞いをすることを発見, また, スピン依存補正項におけるスピン軌道ポテンシャルの格子間隔の変化に対するスケーリングを調べ, これが成り立っていることを確認した。以上の成果は, 我々が開発した新しいシミュレーションアルゴリズムに基づくものであり, 現在のところ, 他のグループによるこれと同様の成果は報告されていない。
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