本研究の目的は、将来の「ニュートリノ振動における粒子・反粒子対称性(CP対称性)の破れ」を測定する実験において、ビーム生成の不定性による対称性の大きさの系統誤差を小さく抑える事である。将来のCP対称性の破れを測定する実験では、陽子加速器からの陽子を炭素ターゲットに当ててπやK中間子を生成する。 本研究では、陽子と炭素の反応からのハドロン(πやK中間子)を測定して、その結果をニュートリノビーム生成シミュレーション(BeamMC)の中で使うことで、研究目的の達成を目指す。 今年度の研究では、昨年度(平成19年度)にCERN NA61実験にて測定したハドロン生成のデータの解析および理解を海外共同研究者と協力して行ってきた。これまでの解析により、暫定的な結果ではあるが、反ニュートリノの親粒子である負電荷のπ中間子の生成断面積分布を実験データより求めた。 また、ニュートリノの親粒子である正電荷のπ中間子/K中間子については、実験データを用いて事象の再構成を行った。今後は、検出器の検出効率や、アクセプタンスの補正を行い、生成断面積分布を求めていく。 一方、今年度予定していたNA61実験での新たなデータ収集については、CERN研究所の加速器運転計画に大幅は変更が生じたために、平成21年度に延期となっている。次年度ではこのデータ収集を行い、ハドロン生成分布の理解をさらに深め、求めたハドロン生成分布をBeam MCの中で用いることにより、目的に向けて研究を遂行していく。
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