本研究の目的は、将来の「ニュートリノ振動における粒子・反粒子対称性(CP対称性)の破れ」を測定する実験において、ビーム生成の不定性による対称性の大きさの系統誤差を小さく抑える事である。将来のCP対称性の破れを測定する実験では、陽子加速器からの陽子を炭素ターゲットに当ててπやK中間子を生成する。 今年度は、CERN SP加速器を用いたNA61実験で測定した「陽子と炭素ターゲットとの1次相互作用からのハドロン生成分布」の結果をもちいて、ニュートリノビーム生成の不定性を小さく抑えるための研究を行った。特に、30GeVの陽子と炭素ターゲットの相互作用から生成されるπ中間子の運動量-角度分布について結果をまとめ(学術雑誌Physics Review Cに投稿。現在査定中のため電子プリント版を研究発表として本報告書に記載)、この結果を用いて東海-神岡長基線ニュートリノ振動実験における、ニュートリノおよび反ニュートリノビームの不定性を小さくした。また、ハドロン生成およびそれ以外の要素からのニュートリノビームの不定性も見積もり、μニュートリノ(反μニュートリノ)ビームについて、それぞれ約20%(15%)の不定性がある事を求めた。また、将来のCP対称性の破れを測定する実験計画や大強度ニュートリノビームについて、国際会議で発表を行った。
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