本研究は、大強度陽子加速器(J-PARC)の遅い取り出しビームのスピル制御用デジタルフィードバック装置に対して、リップル解析の演算装置と通信装置を追加することによりスピル安定化の効率化を図り、ハドロン実験施設へのビーム供給能力の性能を向上させることが目的である。 今回我々は、DSP評価キットをベースとしたフィードバック装置の開発機を製作し、実機設計のためのテスト環境を構築した。開発機によるスタディの結果、外部演算装置としてもう一つDSPを用意して共有メモリにより接続することが容易で有効であると判断した。また、通信装置として組み込みLinuxの入ったEthernetボード(SUZAKU-V)を導入しDSPとの接続を確認した。2つのDSPおよびEthernet通信装置について共有メモリを用いた接続方法を確立し、実機設計へ反映させた。この設計をベースとし実機となる専用基板の製作を開始した。 また、放射線医学総合研究所のがん治療用重粒子加速器(HIMAC)にてビーム試験を実施した。製作したフィードバック開発機と実機で用いる予定のAD変換および光転送用のVMEモジュールを組み合わせて実際のビームを用いた試験を行った。フィードバックシステムとしてビームの成形に成功し、またリップル除去性能についてもフィードバック装置の性能評価ができた。
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