本研究は、大強度陽子加速器J-PARCのメインリングにおける遅い取り出しビームのスピル制御用フィードバック装置に対して、リップル解析の演算装置と通信装置を追加することによりスピル安定化の効率化を図り、ハドロン実験施設へのビーム供給能力の性能を向上させることが目的である。 本研究の平成20年度に製作した開発機を用いて要素試験・接続試験を進めた。その結果を実機設計に反映させて専用基板によるフィードバック装置の製作を行った。フィードバック装置は平成21年夏に完成しJ-PARC加速器ヘスピル制御系をインストール、秋のランでスピル制御のスタディを開始した。このスピル制御の導入により、ハドロン実験施設におけるビーム供給効率が2%から15%と劇的に改善させることができた。また、今後の安定運用に向けて、リップル解析アルゴリズムの検証や各パラメータの相関などの基礎データの収集も行った。今後、加速器自身の性能改善とともに、さらなるビーム供給性能の向上を進めることが可能となった。 フィードバック開発機による要素試験や開発の成果は、国際加速器会議(PAC09)、制御システム国際会議(ICALEPCS2009)および日本加速器学会にて報告した。 実機製作およびそれを用いた、J-PARCにおけるスピル制御のスタディ結果は、平成22年5月の第1回世界加速器会議(IPAC'10)にて成果を報告する。
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