研究概要 |
研究代表者らは中性子過剰な炭素同位体において新しい陽子魔法数が出現する可能性を突き詰めるために、炭素同位体及びその周辺原子核の陽子分布半径を決定する新しい実験手法を開発している。これまで、不安定核の陽子分布半径の測定法としてアイソトープ・シフト測定法が用いられて来たが、陽子分布半径を決定する際に理論情報として必要なマス・シフトの計算精度の限界のため、この手法はZ≦4及びZ≧11の原子核にしか適用できない。この問題点を克服するために、我々は荷電変化断面積の測定を行い、グラウバー模型を用いて陽子分布半径を決定する手法に着目した。荷電変化断面積測定による実験手法が確立されれば、5≦Z≦10の原子核に限らず、人工的に生成しにくく、アイソトープ・シフト測定法では測定が困難な不安定核でも荷電半径の決定が可能になる。 平成21年度に行った最初の測定に引き続き、平成22年度には、実験セットを改善してBe、B及びC同位体の荷電変化断面積を測定した。^<10,11>Be同位体について解析を行った結果、アイソトープ・シフト測定の結果と定性的に一致することが分かった。今後、^<12>Be及び中性子過剰な炭素同位体についての解析を行い、陽子分布半径の新しいデータを提供できると考えている。以下では、これらの新しいデータの意義について述べる。^<16,18>Cについて、研究代表者らが行った先行実験から、B(E2)が異常に小さく、中性子と比較して陽子の四重極集団運動への寄与が異常に小さい結果を得た。これは安定核近傍で見られる、原子核内の陽子と中性子はほぼ同じ四重極集団性を示す、という常識に反する結果である。^<16,18>CのB(E2)異常の一解釈として新しい陽子"魔法数"Z=6の出現が挙げられているが、それは、^<16,18>Cを含めた炭素同位体及びその周辺原子核の陽子分布半径の決定によって明らかになると考えられる。
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