半導体量子ドット中の励起子の位相緩和抑制制御を多光波混合の手法で実現するためにInAs系量子ドットを用いて、以下の3点について研究を進めてきた。 (1) ポンププローブ法による位相緩和時間の上限となるエネルギー緩和時間(T_1)の測定とパルス面積の算出の基となるダイポールモーメントの評価。(2) 2パルス四光波混合法による位相緩和時間(T_2)の励起強度依存性の評価とラビ振動の観測によるダイポールモーメントの評価。(3) 位相緩和抑制制御パルスを照射し、位相緩和時間の制御パルス強度依存性の測定。 試料として用いた量子ドットの位相緩和時間は4.2K下においてはポンププローブ法と2パルス四光波混合法の測定によりT_2<2T_1であることを確認した。四光波混合法で観測したラビ振動から算出されるダイポールモーメントの大きさは(1)のエネルギー緩和時間から評価した値と一致する結果を得、パルス面積の評価が正しく行われていることを確認した。また、四光波混合法で観測したラビ振動は減衰形状を示しており、この原因は各量子ドットのダイポールモーメントの不均一性から生じることを明らかにした。通常の2パルス四光波混合法での位相緩和時間は励起強度に依存していなかったが、遅延時間をつけた位相緩和抑制制御パルスを第1パルスに同軸に照射すると位相緩和時間に顕著な変化が観測され、制御パルスのパルス面積により位相緩和時間が早くなったり遅くなる結果を観測した。
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