研究概要 |
テラヘルツ帯における半導体共役系ポリマーのキャリアダイナミクスを解明するために, フェムト秒チタンサファイアレーザーを励起用およびサンプリング用光源として, テラヘルツ時間領域分光測定系を構築した。また, 試料とする共役系ポリマーのポリチオフェン薄膜を, 高抵抗シリコン基板上に作製した。ドーピングしたポリチオフェン薄膜試料の複素屈折率(複素交流電気伝導度)をテラヘルツ透過測定から決定したところ, そのスペクトル形状はドルーデモデルに当てはまらないことが明らかになった。この測定結果を説明するには, キャリアの局在性を有するいくつかの伝導モデルが候補として考えられ, 正しい伝導モデルの特定に向けて次のような課題があることが分かった。ポリチオフェン薄膜が数ミクロン程度の厚さであると, ドーピングによって適当な吸収量を得ることは容易であるが, 透過するテラヘルツ光の位相シフトが小さくしか得られない。一方, ポリチオフェン薄膜が10ミクロン以上の厚さになると, 吸収量が非常に大きくなるため, 透過するテラヘルツ光の検出が困難になる。現在, これらが複素屈折率の決定精度を制限する主な要因となっている。そこで, 10ミクロン以上の厚さのポリチオフェン薄膜に適量をドーピングでき, さらに複素屈折率のキャリア濃度依存性を測定できるように, 試料作製の方法を改良中である。また, 複素屈折率の温度依存性を測定するために, テラヘルツ光を透過するような特殊な光学窓をもつクライオスタット外筒を設計・作製した。
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