現在の半導体技術は、(a)キャリアドーピングによるバンド端変調と(b)組成制御によるバンドギャップ制御という2つの要素技術を組み合わせたバンドエンジニアリングにより発展したが、次世代のバンドエンジニアリングとして外部からの入力により動的にバンドを制御することがその一つとなると考えられる。そこで、本研究では、カーボンナノチューブ特有の高い電子状態制御性と機械的特性に注目して、(a)電界によるバンド端変調と(b)応力によるバンドギャップ制御という外部入力による連続可変なバンドエンジニアリングを構築するとともに、光情報通信用素子への応用を行う。 (a) では、一本のカーボンナノチューブに2つの局所ゲート電極を形成し、局所ゲートによるナノチューブへの電界印加を試みた。その結果、低温において、ナノチューブ内に形成された2つの量子ドットのポテンシャルを局所ゲート電圧によって独立に制御することに成功し、2重結合量子ドット特性を観測することに成功した。これにより、局所電界によるバンド端変調が可能な素子の作製に成功した。 (b) では、高速歪印加が期待される圧電素子歪印加素子を用いて、圧電素子に約400Hzの矩形波を印加し、フォトンカウンティング法により高速バンドギャップ変調の観測を試みた。その結果、入力信号に同期したバンドギャップ変調を観測することに成功し、バンドギャップの高速変調性を初めて明らかにした。
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