まず、装置の構成を改良した。以前は、プローブとセンサーを金属線で結んでいたが、今年度はセンサーをプローブの背面に直接はりつけた。これにより、検出ヘッドの安定した動作が可能となった。 次に、開発した装置の応用研究について以下を行った。 (1) 界面に2次元系が存在するGaAs/AlGaAs試料に応用した。実験結果から、130nmの空間分解能でポテンシャル分布画像を得ることができた。この分解能は、2次元系の表面からの深さ(100nm)で決められていることが分かった。 (2) 表面に2次元系が存在するグラフェン試料におけるポテンシャル分布を観察した。装置自体が固有に持つ空間分解能(24nm)を確認し、プローブの先端径とほぼ一致することを見出した。また、ポテンシャル分布が空間的に揺らぐ様子が観測された。 (3) GaAs/AlGaAs試料における時間応答特性の研究を行った。矩形波状の電圧を試料に印加することで、センサーの時間応答信号を試料の異なる場所ごとに測定した(磁場中)。試料の真ん中と端とで比較したところ、前者ではサブミリ秒の時定数、後者では速い時定数(数十ナノ秒)と遅い時定数(数ミリ秒)の重ね合わせが見出された。これらは、バルク状態、エッジ状態それぞれにおける電子緩和ダイナミクスにより理解できることがわかった。今回の実験結果は、開発した装置が物質中電子の時空間特性を探究する強力なツールになることを示している。
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