| 研究概要 |
今年度は主に光誘起ホール効果および強相関電子系の非平衡現象について研究を進めた。特に前者についてはハーバード大学を訪問・滞在し、共同研究により新しい応用について研究を行った。具体的には以下の通りである。
[1]光誘起ホール効果の発見および測定方法の提案:我々は円偏光のもとでDirac粒子がホール効果を発現する可能性を世界に先駆け発見した(Phys.Rev.B "Photovoltaic Hall effect in graphene")。この光誘起ホール効果は既存のホール効果とは全く異なり非線形久保公式に基づき予言され、電子の獲得する非断熱ベリー位相(Aharonov-Anandan位相)によって理解できる。さらに、我々は光学実験によってこの現象を検証する方法についても提案を行い、結果をTakashi Oka, and Hideo Aoki, "All Optical Measurement Proposed for the Photovoltaic Hall Effect" (arXiv:1007.5399)にて発表した。
[2]モット絶縁体の絶縁破壊現象の厳密解を用いた解析:モット絶縁体の非線形伝導、非線形光学応答を理解する上で重要な絶縁破壊現象について一次元ハバードモデルに基づいて研究を行った。厳密解と虚時間法を用いることによりしきい値電場を解析的に求めることに成功した。結果はPhys.Rev.B "Dielectric Breakdown in a Mott Insulator : Many-body Schwinger-Landau-Zener Mechanism studied with a Generalized Bethe Ansatz"にて発表した。
[3]非平衡量子モンテカルロ法の開発:非平衡系において相図を決定する上で重要な役割をすると期待される非平衡動的平均場理論、特にその中核となる不純物モデルに対する量子モンテカルロ法の効率化について研究を行った。P.Werner, M.Eckstein (ETH), A.Millis (Conlumbia)との共同研究であり、結果はPhys.Rev.B "Weak-coupling quantum Monte Carlo calculations on the Keldysh contour : theory and application to the current-voltage characteristics of the Anderson model"にて発表した。
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