磁化は磁性体の研究において最も基本的な物理量に一つである。特に、フラストレーション磁性体の新奇な基底状態の研究や、重い電子系における量子臨界現象の詳細な議論には、純良な単結晶試料を用いた、極低温での精密磁化測定が必要になる場合が多い。 我々は今回、我々のグループにより発見された新物質のYb系重い電子超伝導体β-YbAlB_4およびその類縁物質について精密磁化測定を行った。測定は0.3mTから7Tの4桁に及ぶ幅広い磁場範囲と0.02Kから室温に至る幅広い温度域において、種々の測定手法を組み合わせて行った。β-YbAlB_4は零磁場近傍の常伝導状態において、電気伝導度、比熱、磁化が顕著な非フェルミ液体性を示すことが分かっているが、今回の測定から、磁化が零磁場近傍で絶対零度に向かいT^<-0.5>の冪乗則に従う発散的な温度依存性を示すこと、さらに磁化の温度微分がT/Bスケーリングを示すことが明らかになった。この結果から、この系の量子臨界性が、スピン揺らぎの理論で説明のできない非従来型であり、加えて、実験精度の範囲内で実質的に零磁場量子臨界点が実現していることが分かった。 また、零磁場での基底状態がフェルミ液体である類縁物質α-YbAlB_4についても、3T程度の磁場下でメタ磁性を示すこと、さらに、AlサイトにFeをドープした場合、1%程度のドープ量で、常圧下のβ-YbAlB_4と同様の発散的な磁化の温度依存性が観測されるなど、ドーピングにより量子臨界点が実現することが分かってきた。これらの結果は、β-YbAlB_4における零磁場量子臨界点の起源を明らかにする上で重要な結果と考えられる。
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