研究概要 |
1. LaCu_3Ru_4O(<12>(LCRO)についてNQR/NMR測定を行った。この化合物は、前年度測定した CaCu_3Ru_4O_<12>(CCRO)と同型構造(Aサイト秩序型規則ペロブスカイト系)でありながら、Cu, Ruの価数がCCROのそれと異なると思われる。Aサイト秩序型規則ペロブスカイト系においてはCuサイトは結晶学的には1サイトしか存在しないのにもかかわらず、LCROでは二つのCuサイトによるNQRピークが観測された。これは、Cuのもつd電子/ホールが一部局在化したことあるいはLa元素の格子欠陥に伴うのではないかと考えられる。また、CCROにおいてはT_1が異常な温度変化をなし、Cuサブバンド→Ruサブバンドへの電荷移動が起こっている(前年度の結果より)のに対し、LCROにおいてはT_1がかなり高温までT_1T=一定の、いわゆるコリンハ則に従い通常の金属に特徴的な振る舞いを示すことを明らかにした。LCROにおけるT_1Tの絶対値は、2つのCuサイトともCCROの高温部、つまり電荷移動が未だ起こっていない領域のT_1Tの絶対値に近い。これらの点からLCROではサブバンド間の電荷移動が起こっていないように見える。サブバンド内における遍歴性とサブバンド間の電荷移動にはなにか関係があるのかもしれない。その起源としてLCRO/CCROの電子数の違いは重要であろう。 2. 次年度以降のNMR測定に備え、LCROと同じ電子数だけれども磁気モーメントを含む PrCu_3Ru_4O_<12>(PCRO)や、金属絶縁体相転移近傍の組成にあるCaCu_3(Ru_<1-x>Ti_x)_4O_<12>などの合成を行い、いくつかの試料について単相を得た。
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