研究概要 |
SrCu_3Ru_4O_<12>(SCRO)のCu核についてNQR/NMR測定を行った。この化合物は、CaCu_3Ru_4O_<12>(CCRO)のレファレンス化合物である。SCROとCCROはともにAサイトが秩序化した規則ペロブスカイト構造をもち、かつCu,Ruの形式価数は両者で等しいと考えられる。NQR測定の結果、^<63,65>Cuの同位体ごとに1種類の共鳴ラインのみが観測され、Cuの局所電気的環境をみたときに結晶学的なサイトからの分裂が少なくとも静的にはないことが示される。(これは、電子ドープによりCuの平均価数を変えたLaCu_3Ru_4O_<12>とは対照的な結果である;H21年度報告書参照)。また、Cu核の縦緩和率1/T_1は、高温では通常金属に見られるようなコリンハ則(1/T_1T=一定)に従うものの、~200K付近でそこからはずれ、1/T_1Tが減少する。この様な振る舞いはCCROにも観測され、この温度で価数転移-すなわち、CuとRu間の電子移動-が起こっているのではないかと推測する。異なる種類の電子間の相関を考える上で興味深い結果であろう。また、1/T_1Tは温度を下げるに従ってT^*~50K付近から急激な上昇を見せる。CCROにも似たような上昇はおこっているもののその特徴温度T^*は遙かに低く、~数Kにすぎない。1/T_1Tの増大は電子相関の影響をうけてのことと思えるが、両化合物においてそのエネルギースケールが大幅に違っていることが本研究より明らかになった。何が電子相関を規定する主因なのか、SCRO/CCROの基底状態は何か、更に探求をつづけていくべき課題であろう。
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