Bドープされたワイドバンドギャップ半導体SiC(SiC:B T_c=1.4K)が、化合物において非常に稀な第1種超伝導体であることをうけ、その発現機構に迫るため更なる物性評価を進めた。試料中のホールキャリア濃度の制御を目的として、試料合成過程における仕込みB濃度に対する物性の変化を追及したところ、B濃度の増加に従ってキャリア数が大きくなって系が金属化傾向を示し、超伝導転移を示す領域では、キャリア数によって第1種超伝導、第2種超伝導が発現する領域が存在することを明らかにした。この超伝導が発現する領域では、試料の表面分析の結果から、キャリア数が大きくなるにつれて鴛がほとんど変化せず、グレインザイズが大きくなる傾向が得られた。このことは、ある一定B濃度のグレインが常に合成されており、そのサイズが大きくなることによって系が非常にクリーンになって第1種超伝導を示していることを表している。 さらに、共有結合性の強い他のワイドバンドギャップ半導体としてAlN(バンドギャップ約6eV)に着目し、超伝導化への萌芽的アプローチを行った。現在、試料中の窒素量の変化によってキャリアがドープされたAlN_xの合成を期待した新物質開発によって、約2.8Kで超伝導転移を観測した。現時点では、均一な超伝導相を得ているとは言い難く、キャリア濃度を決定出来てはいない状況であるが、合成条件の制御によってT_cが変化し、超伝導相の興と結晶格子との間には相関があることから、試料中のAl/N比が1.0から変化したことによってキャリアが導入されていることが考えられる。
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