研究概要 |
本研究は、シンクロトロン光角度分解光電子分光を用いて準粒子バンド構造のイメージング測定を行うことにより、強相関電子系における機能(伝導・磁性)と相互作用の関わりを(サブ)マイクロメートルスケールの空間的ドメイン構造内で明らかにすることを目的とする。本研究の目的を実現するために,平成21年度は、前年度にパルスモータ制御系の導入を行い、数μm精度の試料位置操作を実現した高分解能角度分解光電子分光装置において強相関電子系物質のマイクロ機能イメージング測定をスタートした。 具体的な成果および現状を以下に示す。 (1) 分子性導体系(TMTSF)_2PF_6における、ラッティンジャー面の直接観測に成功。 擬一次元分子性導体における磁気的な相互作用と超伝導の関わりを明らかにするために、スピン密度波転移を示す(TMTSF)_2PF_6において、低励起エネルギー3次元角度分解光電子分光測定を行った。その結果、これまで光照射によるラディエーションダメージから観測が不可能だった、TMTSF分子に起因するバンド分散の直接観測および擬一次元的なラッティンジャー面の直接決定に成功した。この結果は、バルク敏感な低励起エネルギーシンクロトロン光とμmスケールで試料位置の走査を同一環境で利用することで初めて実現したものである。 (2) 希土類系強磁性半導体としては最も高い強磁性転移温度(Tc~200K)をもつ薄膜の作成に成功。 均一系における内的ドメイン構造と磁気的相互作用による準粒子構造の関係を明らかにする上で重要となる、Laドープ型EuO強磁性薄膜の作成を行い、希土類系強磁性半導体としては最も高温の強磁性転移温度(Tc~200K)をもつ薄膜を作成することに成功した。今後、この系におけるマイクロ機能イメージング測定を早期に実施する予定である。
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