研究概要 |
本年度は、異方性のある2次元ボーズ粒子系について、斥力が強い極限での分数電荷の密度相関の振る舞いを調べた。具体的には、サイト内および隣接するサイト間の粒子に働く斥力が強い極限で、1次元の厳密解を用いた2次元系の基底を構成し、これらで張られる制限されたヒルベルト空間で、空間的異方性をもつ2次元系の動的構造因子S(k,w)を計算した。波数によって、緩やかな連瘢スペクトルが現れる領域と、デルタ関数のピークが現れる領域とに分かれ、それぞれの領域で、2回の基底変換を通じて、分数電荷間の密度相関の計算を行った。その結果、分数電荷(スピノン)の閉じ込め効果は、通常考えられている緩やかな閉じ込めではなく、波数に強く依存した急激な閉じ込めが起こることが明らかになった。この研究成果は、2008年8月にオランダのアムステルダムで行われた国際会議25th International Conference on Low Temperature Physics (LT25)で口頭発表を行い、プロシーディングスとして出版された。 また、ポーズ粒子系の化学ポテンシャルを変化させた場合に対応する、磁場中での磁性体の性質についても研究を行った。磁場中の動的性質は、1次元系でさえも十分に理解されていなかったため、厳密解を用いて1次元量子スピン系の磁場中での動的性質を詳細に調べた。その結果、これまで知られていた準粒子描像では表すことのできないストリングを担う準粒子も、磁場中では重要な役割を果たしていることが分かった。これにより、長年謎であった量子スピン鎖で観測されていた高エネルギーの連続スペクトルの起源を明らかにするとともに、磁場中量子スピン鎖の動的性質の全体像を明らかにすることができた。この研究成果は、2009年1月に出版されたPhysical Review Letters誌に掲載された。
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