独立行政法人物質・材料研究機構が所有するハイブリッド磁石を用いて25Tを超える定常強磁場での核磁気共鳴(NMR)測定を実現し、磁場誘起相転移や量子臨界現象の観測から触媒やゴムなどの機能性材料の構造解析まで、従来の磁場では解明が困難であった事象について、微視的な観点から新たな情報を提供するための装置開発を行っている。本年度は昨年度28Tにて行なった磁場揺らぎ補償機の実証実験をより高い32Tにて行なった。30Tまでの磁場は通常、室温ボア52mmφ磁石を用いて発生させているが、30Tを越える磁場を発生させるためには室温ボア32mmφの磁石を用いる必要がある。室温ボアが小さくなるためにプローブや補正コイルなどは昨年度まで使用していたものより、小型のものを開発した。これら開発したプローブと補正コイルを用いて、補正機の時定数の最適化をはかり、標準試料D_2Oの^2D-NMRを32Tにて行なった。その結果、補正機を用いることで32Tにおいて磁場の揺らぎを8ppmから1ppmまで低減することに成功し、^2D-NMRスペクトルの積算を1ppm程度まで安定化した磁場で行なうことに成功した。これらの実証実験により、25Tを越える磁場でのNMR測定において問題となっていた磁場の揺らぎを本研究で開発した補正機を用いることで大きく改善できることが示せた。
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