前年度から、ウランカルコゲナイド化合物β-US_2が巨大磁気抵抗及び金属絶縁体転移を示すこと及び、その原因として磁気ポーラロンの形成が考えられることを明らかにしており、本年度においてJ.Phys.Soc.Jpnに論文が受理された。さらに磁性と伝導の相関が強い系を探索するため、フラックス法等の物質探索を行える環境を整えた。研究対象としては、まず取り扱いの困難なアクチナイド元素を用いる前に、非放射性元素で、過去にもEuO等の化合物で磁気ポーラロンの存在が議論されたこともあるEu元素に注目した。具体的な育成対象としては、既に結晶育成が報告されており、磁性と伝導及び構造の間に相関が強いとして知られているEuFe_2As_2を選択し、Snフラックス法で育成した。これらの結晶を用いて、研究を行った結果は、日本物理学会で発表を行っている。これらの現状を踏まえて、本年度では、さらにAsをTeで置き換えたカルコゲナイド化合物EuFe_2Te_2の育成を試みた。特にEuFe_2Te_2に限らず、Eu-Fe-TeもしくはU-Fe-Geの3元化合物の存在は現在のところ知られておらず、成功すれば新物質の可能性が高く、新規な物性が期待される。まずTeフラックスでEuFe_2Te_2の育成を試みたが、残念ながらEuTeとFeTe_2の単結晶が育成された。現在は、フラックスをTeからSnに置き換えて、育成を再度試みている。またEu-Fe-Teだけでなく、SeやSまで探索範囲を広げ、新物質開発を進めている。
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