研究課題
これまでの研究により、常磁性半導体β-US_2が低温で抵抗が数桁変化する巨大磁気抵抗及び金属絶縁体転移を示し、これらの転移にウランの5f電子による磁性が関与している可能性が考えられた。その後、β-US_2と同じ斜方晶の結晶構造を持つ強磁性半導体であるUSeSについても同様の磁気抵抗測定を行った。ヨウ素を輸送剤とする化学輸送法を用いて単結晶育成を試みた結果、我々が育成したUSeSは、磁化測定の結果からキュリー温度は23Kであり、過去の報告と同程度であることが分かった。この試料を用いて、電流をb軸に、磁場を磁化容易軸であるc軸方向に印加し、磁気抵抗測定を行った。OTでは、β-US_2と同様に室温付近から抵抗が減少し、100K以下で急激に抵抗が上昇する。強磁性転移温度近傍で2つのピークを作り、その後抵抗は減少する。磁場を印加すると、強磁性転移温度近傍で現れる抵抗の増大は消失し、ほぼ平坦な温度依存性になる。この変化量は、最大で2桁程度抵抗が変化しており、β-US_2と同様に巨大磁気抵抗が観測された。以上の結果は、この系の半導体的な振る舞いを示す抵抗に、ウランの5f電子による磁性が大きく関与している証拠であり、重要な結果である。また巨大磁気抵抗を示す化合物の探索をフラックス法により試みたが、ウランやEu元素を含む新たなカルコゲナイド化合物を育成することはできなかった。しかしながら、副産物としてFeTe_2の単結晶を育成することに成功した。過去の報告では、半導体であり非磁性であることが知られていたが、我々の単結晶では、11K及び7Kに磁化率に折れ曲がりが観測され、反強磁性転移を示すことが明らかとなった。つまりFeTe_2もまた巨大磁気抵抗を示す磁性半導体の可能性があるので、今後は磁気抵抗を含めて研究を進めていく予定である。
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IOP Conf.Series ; Materials Science and Engineering
巻: 9 ページ: 012088-1-012088-8