研究概要 |
ポストペロブスカイト型イリジウム酸化物CaIrO_3の単結晶育成に成功した。CaCl_2をフラックスとし、1250℃から徐冷することで、最長大2mmのa軸方向に伸びた針状結晶を得た。育成試料に対する磁化測定から、115K以下で発現する弱強磁性がb軸方向を向いていることを明らかにした。磁気構造の詳細を解明するために、放射光磁気ブラッグ回折実験を実施した。入射エネルギーをイリジウムのL_3吸収端に合わせ、共鳴効果により強度を稼ぐことで、一般には弱い磁気反射の観測に成功した。磁気反射は001(1 : 奇数)であり、これはa, b軸方向に強磁性、c軸方向に反強磁性的に結合するスピン配置モデルで説明することができる。こうしたスピン配置は、IrO_6八面体が頂点共有する方向に反強磁性、稜共有する方向に強磁性的に結合することを予言するGoodenough-Kanamori則と整合する。群の表現論を用いた解析により、スピンの方向に関する情報が得られる。スピンは基本的にはc軸方向に向き、わずかにb軸方向にキャントしていることが推論された。こうしたキャントの起源として、Irサイトにおける単一イオン異方性が主要な役割を果たしていることが予想される。本年度の成果は、翌年度に計画している、1. 磁気反射のエネルギー依存性(共鳴効果)の解明、2. 磁気反射の偏光依存性の測定、3. 散漫散乱の観測、4. LS分離、の礎となるものである。
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