研究概要 |
前年度に引き続き、ポストペロブスカイト型イリジウム酸化物CaIrO_3の放射光磁気ブラッグ回折実験を実施した。21年度は、SPring8 BL19LXUにおける4軸回折計を用いることで、超格子反射の偏光依存、エネルギー依存、アジマス角依存についての情報を得た。実験の多くは、入射光波長を強い共鳴効果が期待されるL_3吸収端に合わせて実施した。入射光の偏光方向をa軸に平行にすることで、ATS散乱の寄与を消した。観測された超格子反射は、σ入射π'反射の偏光依存を示し、また磁気転移温度以上で消失する。従って、磁性由来の反射であると結論付けた。反射点は、001(1.奇数)であり、前年度IPを用いた実験の確認が取れたことになる。これらの磁気反射は、a,b軸方向に強磁性、c軸方向に反強磁性的に結合するスピン配置で理解できる。L_2吸収端においては、実験精度の範囲で磁気反射を観測することができなかった。これは、CaIrO_3においてもSr_2IrO_4と同様に、Jeff=1/2の軌道状態が実現していることを意味している。一方で、入射光の偏光をb軸に平行にすると、ATS散乱の寄与が主要になる。L_2吸収端とL_3吸収端のATS散乱の強度比I(L_2)/I(L_3)は1%程度であり、磁気反射同様、著しい吸収端依存性があることが判明した。このことは、磁気反射のみならず、ATS散乱も軌道状態を調べる有効なプローブであることを示唆している。
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