主な内容はイオン結合系の代表としてのMgOである。 MgOは融点が高いため、その決定において電子系の熱励起効果が無視できない。これを提案してきた手法で扱うには近似が必要である。そこで、マルチカノニカル集団中の各サンプルを高精度計算で計算する際の温度をサンプルがもっとも物理に寄与する温度にとり、サンプルの自由エネルギーと内部エネルギーを与えるモデル原子間ポテンシャルを別々に与え、自由エネルギーを与える方で分子動力学などを実行し、潜熱など内部エネルギーの評価は後者を使う近似を開発した。 こうして、MgOの融点、融解熱、融解時の体積変化を計算した。融点は電子系の熱励起効果で100Kほど下がることがわかったが、これは液体側で電子系のギャップが閉じるために熱励起による自由エネルギーの減少が大きいことを反映している。得られた融点はPBEを用いているにもかかわらず実験値に近く、かつ、得られた潜熱は実験的な推定値(直接測定ではないが)に近いものであり、これらの点は既存のLDAによる結果とは異なっている。 また融解の圧力依存性についても同様に調べた。MgOの融点の圧力依存性は重要であるが、実験と理論が一致していない。計算の結果OGPaで得たモデル原子間ポテンシャルは、各圧力で最適化したそれらとほぼ同等の結果を与えることがわかり、提案している手法が有用であることがわかった。しかしながら結果そのものは既存の理論と一致するもので実験との矛盾は解消しなかった。新しい交換相関汎関数PBEso1との比較も行ったが実験との不一致は解消しなかった。 その他に第一原理計算プログラムTAPPの開発も重要である。T2KシステムへのTAPPの移行を行った。この結果、1CPUソケット内はスレッド並列、CPUソケット間はMPI並列のハイブリッド並列が最も性能が良いことがわかった。 また次年度の研究のための準備も行った。
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