1.[本研究課題の目的]:(1)ナノ・キャパシタの電子構造と特性を第一原理的に計算する手法の確立、(2)実際のナノ構造に関する計算を行い、広くナノ・デバイスの設計指針となる普遍的な物理と知見を抽出、(3)意図する特性を備えたキャパシタの理論的設計とシミュレーションによる検証。2.「平成22年度の研究内容」:(1)原子空孔等の欠陥が、キャパシタの特性に及ぼす影響を評価するにため、まず今年度はシリコン結晶中の欠陥V10について基礎的な電子状態計算を行った。(2)実空間コードへのウルトラソフト型の擬ポテンシャルの実装を行い、基本的な部分に関する正常動作を確認した。3.[具体的内容と結果、重要性]:(1)ナノ構造体中における格子欠陥がもたらず影響の大小やその物理的要因を理解することは、その系をナノキャパシタ等のデバイス材料として用いた場合に欠陥の挙動を制御・利用すること通じる重要なプロセスである。(2)大規模な系において電子構造計算を実行するには、超並列計算機とMPIを用いて実装したプログラムを用いることが必須である。特に、実空間法を用いたプログラムは、FFT(高速フーリエ変換)を使う必要がない為に超並列機の性能を最大限に引き出すことができるが、その一方において、計算量自体を最小にすることのできる擬ポテンシャルであるウルトラソフト型擬ポテンシャルを実空間法コードに実装した例はほとんどなかった。これまでに作製したコードで、擬ポテンシャルとしての正常動作を確認した。ある種の積分計算およびプロセス間の通信に要するコストをさらに低減する余地が残っているが、今後、大規模な電子状態計算に立脚したキャパシタンスの研究を進めるて行くために必須のセットアップが整いつつあるといえる。
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