1.「本研究課題の目的」 (1)ナノキャパシタの電子構造と特性を第一原理的に計算する手法の確立(2)実際のナノ構造に関する計算を行い、広くナノデバイスの設計指針となる普遍的な物理と知見を抽出(3)意図する特性を備えたキャパシタの理論的設計とシミュレーションによる検証 2.「平成23年度の研究内容」 既存の実空間コードを出発点にして昨年度追加的に実装を開始したウルトラソフト型の擬ポテンシャル計算プログラムを、今年度MPIおよびopen-MP(並列化言語)を用いて並列化する作業を行い、完成した。このプログラムが正常かつ高速に動作することを検証するため、2枚のグラフェンをねじれ角付きで積層した今までに無い超大規模な炭素原子系の、第一原理電子状態計算を行った。さらに、この高速プログラムでキャパシタンスを計算するためのコーディングを開始した。 3.「具体的内容と結果、重要性」 多くの実験と直接の比較が可能な程に大規模で現実的な系において、電子構造計算を実行してキャパシタンス等の有用な物理量を得るには、膨大な計算をリーズナブルな時間で遂行する為に超並列計算機と並列化言語を用いて実装したプログラムを用いること、さらに計算量自体を計算精度を落とすこと無く最小化する擬ポテンシャルであるウルトラソフト型擬ポテンシャルを用いることの、両方が必須である。実空間法を用いたプログラムは、FFT(高速フーリエ変換)を使う必要がない為に超並列機の性能を最大限に引き出すことができるが、実空間法コードへのウルトラソフト擬ポテンシャルの実装に成功した例は、これまでほとんどなかった。今年度、ウルトラソフト型擬ポテンシャルの実空間コードへの実装を、並列化作業も含めて完成した。現在は、このウルトラソフト実空間プログラムにキャパシタンスの計算が可能となるためのコーディングを進めている段階である。
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