研究課題
双対変換は分配関数の対称性を利用した平衡状態における特異性の発現を検出する枠組みである.一方非平衡状態と平衡状態の間に成立するJarzynski等式も数理構造の中に分配関数をその中に包含する新規概念として最近注目されている.これを利用して本年度は平衡状態だけでなく非平衡状態の性質に関する解析及び産業的応用として、最適化問題への利用を考察した.最適化問題への応用に関しては熱アニーリング、及び量子アニーリングに対する適用の両者を考えた.前者に関しては非常に長い緩和時間を要するスピングラス相における最適解探索に利用できる新しいスキームを提案するに至った.後者に関しては最適化問題の難しさに依存せず実行可能であることを示した.共に最適化問題に対して、非平衡過程を利用した新しい手法として今後の注目を集めると期待できる.非平衡状態の解析としても重要であり、古典・量子多体系の非平衡過程に対する厳密解をいくつか得ることに成功している.これは将来の実験時に実験精度チェック等に使えることが期待できる.双対変換と繰り込み群の整備に関してはレヴュー記事を執筆して、次年度の発展に向けての準備を整えている.議論の厳密性についてもいくつか進展があり、それらを先んじて紹介している.ひとつは階層格子と呼ばれる繰り込み群による解析が有効な系で、本課題の中心的な手法である双対変換による予言の精度について議論して、従来より知られている厳密解との対比により系統的に精度を高める事が出来ている事を定量的に確認している.
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