本研究は、流体系の金属-非金属転移について、ゆらぎの直接観測を行い、ゆらぎの観点から相転移の位置づけを試みる。 今年度はセレンーテルル混合糸について、組成比50:50および70:30の試料について、それぞれSPring-8を利用した透過率、小角散乱、非弾性散乱測定を行った(50:50組成の小角散乱測定については、前年度の実験の再現性確認)。X線透過率測定の結果から、温度上昇と共に試料が低密度相から高密度相へと連続的に転移していくことが観測できた。転移領域のちょうど中間当たりでは、小角散乱強度が極大を示し、転移に伴い密度ゆらぎが増大することを改めて観測できた。また非弾性X線散乱測定から見積もった(高周波数)音波速度は、超音波測定の(低周波数)音速に比較して著しく速く、所謂「速い音速」状態となっていることが分かった。特にこの「速い音速」度合いは、転移領域に向かって増大するという、小角散乱強度と似た温度変化を示した。このような結果から、この「速い音速」度合いは、ゆらぎの良い指標であるということが示せた。組成依存性については、(以前行った純粋テルルの結果も含め)セレンの割合を増加させるにつれ、それぞれの温度変化曲線は高温側へとシフトしていった。これは過去行われた超音波や電気伝導度など、物性変化ともコンシステントなものであった。
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