近年になり、金属-非金属転移を起こす流体(液体)系では、その転移領域で「速い音速」などの特徴的なダイナミクスを呈することが実験的に明らかとなってきた。本研究では、このようなダイナミクスを「動的ゆらぎ」として捉え、ゆらぎの観点から金属-非金属転移の相転移としての位置づけを行うことを試みる。 今年度も引き続き、転移を起こす典型例である液体セレン-テルル混合系を対象として実験を行った。液体テルルのX線小角散乱測定では、測定温度範囲(450-900℃)で転移に伴う有意な散乱強度の変化を得ることができなかった。ただこれは真の転移温度が深い過冷却域に有り(~300℃)、ゆらぎの影響が測定限界以下に小さいためであったと現時点では考えている。組成比70:30、50:50に対する非弾性X線散乱測定では、転移領域で「速い音速」状態となっているという、前年度までの測定結果の再現性を確認すると共に、測定点を増やし、議論の材料を増強することが出来た。 また実験と平行して、転移による「ゆらぎ」とダイナミクスとの関係について議論を行った。その結果、このような「ゆらぎ」の概念は金属-非金属転位に限らず一般の液体-液体構造相転移にも適用可能であることが示唆された。今後適用範囲を広げ、研究の展開を図りたい。
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