本年度は、空間非一様場における空間2次元進行スポット解のダイナミクスの数値・数理解析を行った。特にスポット解の斜め衝突問題において、数値シミュレーションから回転運動を発見した。これまでの進行スポット解について定常スポット解からドリフト分岐後は一方向に直進することだけが知られていた。我々は、反応拡散方程式系の大域的なスポット解の分岐構造を数値的に計算し、ドリフト分岐点に加えて、ピーナッツ分岐点に近いパラメータ領域で回転運動が出現したことを確認した。これら2つの対称性破壊分岐が同時に生じる余次元2の特異点近傍での縮約ダイナミクスを分岐理論に基づいて導出した。この縮約常微分方程式系は2モード間相互作用の標準形となっており、それらの係数を元の偏微分方程式系のパラメータ設定から決定し、力学系理論に基づいて解析した。その結果、進行スポット解の回転運動は余次元2の不安定性に特有のダイナミクスであり、分岐理論に基づいた縮約解析の有効性を示すことができた。我々の縮約方程式系の解析から、より複雑な運動の可能性も示唆された。これらの結果を論文「Rotational motion of traveling spots in dissipative systems(Physical Review E巻80頁046208)」として発表した。また2009年11月と2010年9月にベルリンとゴールドレインで行われたアクティブマターに関する国際研究集会にてポスター・口頭発表をそれぞれ行った。2011年1月に京都大学で国際研究集会を組織運営した。
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