本研究課題は1.量子アニーリングの有効性を基本的な模型を用いて明らかにし、2.量子アニーリングをスピングラス模型に応用することを目的としている。本年度の成果は以下の通りである。 1.量子アニーリングの研究では、ハミルトニアンに含まれるパラメターをゆっくり時間変化させることに注意が集まってきたが、今回我々は瞬間的にパラメターを変化させる場合の系の時間発展に注目して研究を行った。瞬間的にパラメターを変化させることは、状態を断熱的に時間発展させてターゲットの状態を得るという量子アニーリングの本来の目的からすると無駄である。しかし、巨視的な系が量子力学に従ってどのような緩和をするか、という観点からとても興味深い。今回、研究代表者はイタリアのグループと共同で、1次元横磁場イジング模型において横磁場を瞬間的に変化させた場合の系の時間発展を調べた。1次元横磁場イジング模型は可解模型であって、その特殊性からキンク密度という物理量は特徴的な時間スケールを持たずに平衡値に収束(非熱化)することがわかった。この成果は可解模型における物理量の熱化・比熱化に関する一般論を作る際の足がかりになるはずである。(arXivにて閲覧可、Phys.Rev.Bに投稿中。) 2.スピングラスへの応用については数値計算を行うための準備を行った。
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