本年度の研究実績は以下の3項目にまとめられる。 1日本の全市町村の人口分布の時間変化 2人口密度の時間変化 3埼玉県の人口分布と各市町村の人口成長の時間変化 1.に関しては、1980年以降の全市町村人口の累積分布の時間変化を調べた。1980年から2000年の間の全市町村人口の累積分布はほとんど同じ形となり、二つのべき分布を接続した形の分布関数で近似できる事がわかったが、平成の市町村合併の影響で2005年には対数正規分布に移行することがわかった。今後人口が都市部に集中して流入したり、再び市町村の合併が促進されれば元の分布形に戻るかもしれないが、人口成長が全国的に頭打ちになっていることと、都市部への人口移動の沈静化を考慮すると、人口分布の形状は定常になるのかもしれない。 2.に関しては、1920年から2000年までのデータ解析を行った。これは2000年10月1日の市町村区分における人口を年度を遡って追跡し、各市町村区分の面積でそれらを割る事で人口分布の密度変化を調べたものである。この解析の結果、人口密度も基本的には対数正規分布に従うが、1960年以降は裾の部分が対数正規分布からはずれてくることがわかった。これは人口の過密地域が増加した事で、人口密度の許容限界(日本の場合1km^2あたり1万2千人程度と考えられる)に達する地域が増えた事によると推測できる。 3.に関しては、2005年に埼玉県に存在する全市町村人口の累積分布を調べたところ、日本の全市町村の人口分布と極めて近い形をしていることがわかった。そこで、各市町村の1960年から2000年までの人口成長率の分布を調べるとべき分布となっていることが判明し、この事が分布の概形の形成に関与している事が推測される。
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