研究概要 |
1.Beck-Cohen superstatisticsの対数振幅と極値統計の関係 非平衡系で観測される非ガウス分布を記述するためにBeckとCohenが導入した、superstatisticsと、本研究で導入した相乗的確率過程との関係を明らかにした。我々の相乗的確率過程では、観測時系列がローカルな変動を表わす正規確率変数と標準偏差の変動を表わす対数振幅変数に分解されるが、対数振幅変数が極値分布に従うとき、観測される分布は自由度の2のt分布(指数-3のべき分布)、もしくは両側指数分布になることを示した。これらの分布は、superstatisticsの典型的なクラスに属しているが、任意のパラメタを含んでおり、なぜそのような分布が自然に観測されるかを説明することはできていなかった。本研究では,それらの分布と極値統計における極限分布との関係を示し、調整パラメタに依存せずに特徴的な分布が出現することに可能な説明を与えた。 2.非対称間欠性の解析手法の開発と心拍変動解析への応用。 非対称分布に従う間欠性ゆらぎについて、分布の左右を別々に粗視化する新たな多重スケール解析と非対称な非ガウス分布を特徴づける統計指標を導入した。非対称な間欠性をもつカスケードモデルを仮定し、理論的な非対称性が、我々の方法で定量化できることを確認した。この方法を、長期心拍変動の解析に応用し、心拍変動には非対称な間欠性があることを見出した。さらに、健常人における加齢の影響や病態との関係を調べた結果、心拍変動の非対称性と自律神経系の心臓制御との関係が示唆された。
|