本研究では、金属電極間に、高い電気伝導性が期待されるπ電子共役系単分子を架橋させた複合ナノ接合を作製し、ゲート電極を利用した単分子のポテンシャル制御による単分子内における電気伝導の観察とその伝導機構の解明を目指す。 本年度は、我々がこれまでの研究で開発してきたトップダウン型微細加工法と自己組織化によるボトムアップ型微細加工法を融合させたハイブリッド型微細加工技術の改良により、超伝導材料や強磁性体材料など様々な機能性材料に対して加工可能なナノ加工技術の確立を行い、この技術によって作製されたナノスケールオーダーの溝構造を持つナノギャップ電極の有効性を検証した。具体的には、本手法により作製された超伝導ナノギャップ電極間に、リガンドで被覆された金微粒子を配置させることにより、単一電子素子を作製し、電気伝導評価を行った。その結果、電極間に流れる電流-電圧特性は、明瞭なクーロンプロッケード現象を示した。さらに、いくつかのリガンド(アルカンチジチオール・ベンゼンジチオール・キシレンジアミン)を採用した結果、キシレンジアミンをリガンドとして用いた単電子素子が最も低い接合抵抗を示した。この結果は、作製された超伝導ナノギャップ電極が、そのギャップ間に微粒子や単一分子を架橋させ、リガンド構造を最適化することにより、新奇な機能を有するナノデバイスの構築に大変有効であることを示唆している。
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