研究概要 |
本研究では、(1)従来のトップダウン型微細加工法に分子の自己組織化を利用したボトムアップアプローチを融合させたハイブリッド型微細加工技術の開発(2)本手法を用いたナノギャップ電極の作製、(3)ナノギャップ間に高い電気伝導が期待されるπ電子系分子を架橋させた複合ナノ接合を作製し、新規分子デバイスの創出を目指す。H24年度では、π電子系分子としてグラフェンに注目し、前年度開発した多温度ゾーン化学気相成長(CVD)装置を利用した自己組織化成長によるナノギャップ電極を架橋したグラフェンナノデバイス作製技術の開発を進めた。この目標達成に向けて、(1)マイクロスケールのギャップ電極をテンプレートとしたグラフェン成長と、(2)機械剥離グラフェンをテンプレートとしたグラフェン成長の2つ観点から予備検討実験を進めた。(1)では、フォトリソにより作製した2μmギャップ電極間でグラフェンの形成を示唆するG,2Dバンドラマンシグナルの観察に成功した。実際、電極間の電流-電圧特性を測定した結果、150~1500KΩ程度の抵抗値が得られた。この結果は、本研究が進めるグラフェンナノデバイス作製に対するアプローチが原理的に十分可能であることを示唆している。(2)では、CVD成長により形成させた多層グラフェンの層構造が、グラファイト結晶で通常観察される周期構造とは異なった乱層構造を形成していることを見出した。さらに、この多層グラフェンのキャリア輸送特性を調べた結果、高いキャリア移動度が期待される単層グラフェンの特性に類似していることを見出した。この結果は、乱層構造を形成したCVD成長グラフェンを、自己組織的にギャップ間へ架橋させることで、高機能グラフェンナノデバイスの創出が可能であることを示唆しており、現在これまで蓄積してきた技術融合によるグラフェンデバイスのナノスケール化を進めている。
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