研究課題
本研究課題においては、衝突成長過程を通じた微惑星や小天体(小惑星や彗星)の構造進化モデルを確立することを目指す。とくに、サイズ・密度の異なるアグリゲイト同士の衝突シミュレーションを行うことによって、微惑星や小天体における圧縮過程やクレーター形成過程を明らかにすることを目的とする。去年度では様々なサイズ・密度をもつアグリゲイトを作成し、同サイズ・同密度のアグリゲイト同士の衝突をシミュレートすることによってフラクタル次元の小さい低密度状態でダストが成長することが示唆された。本年度では、異なるサイズのアグリゲイト同士の衝突のシミュレーションを行った。結果として、(1)サイズ比が大きくなればなるほど、圧密される領域は局所的になるがその圧密度合いは大きいものではなく衝突での圧密は難しいこと、(2)そのような過程で形成されるクレーターから放出されるイジェクタは少量であること、(2)サイズ比によって成長限界速度自体はほとんど変わらない(氷アグリゲイトで~50m/s)が、成長限界速度より小さい衝突速度ではサイズ比が増すほどより成長しやすくなること、が明らかとなった。また、様々な密度(配位数)のアグリゲイトの衝突シミュレーションを行った結果、配位数が大きい密なアグリゲイトは跳ね返ってしまう可能性があるが、配位数が6より小さいアグリゲイトなら付着できることが明らかとなった。これは従来の室内実験の結果に対して重要な示唆を与えるものである。総じて、本研究によってダストの衝突成長過程を通じて形成される微惑星および小天体は極端に低密度としか成り得ないことが結論された。現在観測される比較的高密度の状態になるためにはガス圧による圧縮や熱的変性など衝突以外の過程が必要であることが示唆される。
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