研究概要 |
・宮城県牡鹿半島において,口径約500m,平均間隔約150mの7台の強震計からなる稠密アレイ観測を継続し,データを収集した.地震波干渉法による地盤構造推定について着手した. ・地震波干渉法の成立条件にかかわるエネルギー等分配について,近地地震の波形記録の粒子軌跡を用いて検討した.その結果,直達S波走時の1.5倍程度の経過時間で粒子軌跡が安定化していることが明らかになった.また粒子軌跡は,水平成層構造における表面波,実体波を含めたエネルギー等分配を仮定した理論計算により,うまく説明できることが分かった.これは地震コーダ波において,エネルギー等分配が成立していると考えてもよいことを意味する. ・2005年福岡県西方沖地震の震源域における1観測点の微動データに地震波干渉法を適用し,観測点周辺の地震波速度が本震に伴って約1.5%低下したことを発見した.その要因としては,強震動による浅部地盤の損傷が考えられる. 以下の2つの成果は,当初の研究実施計画になかったものである. ・2次元無限等方散乱媒質において,等方震源からのP波,S波のエネルギー伝播を輻射伝達理論に基づき定式化した.直達項と1次散乱項は解析的に,2次以上の多重散乱項は数値計算で評価できる.この定式化を用いて,エネルギー等分配の証拠となるP波,S波のエネルギー平衡を考察した.その結果,ポアッソン媒質における平衡状態でS波エネルギーはP波の3倍となること,遷移時間はP波とS波の変換散乱係数に依存することが明らかになった. ・地震波エンベロープの統計的ゆらぎが仲上m分布に従うことが近年明らかになった.そこで,エンベロープ振幅のゆらぎを特徴づけるm値を,最尤法により推定する手法を新たに開発した.またその手法を近地地震のコーダ波に適用することにより,m値は平均として1であることを初めて発見した.
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