研究概要 |
回転する箱型非粘性電磁流体の磁気対流の有限振幅定常解を求める手法を考察した。速度の回転軸方向成分に比例するような人工的な強制力のもとでは,すでに線形解の臨界波数が発散しており,解析的に問題があることがわかった。そこで熱拡散率有限の熱対流モデルを考察したが,線形解から出発して,逐次的に定常解を得るというアルゴリズムを実装しつつあるものの,最終的な解を得ることはできなかった。しかし天体ダイナモの基本構造を理解するために,粘性ゼロのダイナモの定常解を直接求めるというこの問題の意義は依然として大きく,今後も研究を継続していくつもりである。 本研究の中で得られたもっとも大きな成果は,粘性ゼロではないが,それをなるべく小さく抑えた地球型ダイナモの数値シミュレーションをおこない,流れと磁場の大規模構造の発現を確認したこと,そしてこれが非粘性の極限での地球ダイナモの基本構造であるという示唆を得たことである。これまでの類似研究ではこのような大規模構造は発現せず,生成する磁場も地磁気とは異なる特徴を示していた。その原因は,表面温度一様という,地球物理的に不適切な熱対流の境界条件を課していたためである。この場合,子午面循環が仮にあったとしても,それにともなう温度風(東西流)はほとんど吹かない。なぜなら極-赤道間の温度差が,とくに表面付近でゼロに近く,緯度方向の温度勾配も小さいからである。本研究では,熱フラックス一様の熱対流モデルを採用したために,極-赤道間の大きな温度差が実現し,強い温度風と,強いトロイダル磁場が維持された。少なくとも地球のコア対流については,低粘性のダイナモシミュレーションによって,その基本構造が,おぼろげながらも明らかになったのかもしれない。
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