研究概要 |
室内実験と野外観測の両方から,火山爆発に伴う空気振動の波形の持つ情報を解読することを試みている.室内実験では,非ニュートン性流体中の連続的な気泡の上昇・破裂に伴う音波生成の物理機構を調べた.ある現象の時間間隔,様式,前兆信号,そしてそれらを支配する記憶効果や前のイベントから次のイベントへのフィードバック現象を解明することは,地球科学の最重要課題の1つであるが,この実験では,この問題と物理的相似性の強い現象を見出した.それは,気泡の破裂に伴う圧力波の波形と破裂前に発生する前駆的音波に明瞭な相関関係があり,両者の特徴が準周期的に変動する,というものである.物性試験や,データ解析の結果,その原因が,繰り返し破裂する気泡が流体内部に残していく履歴の蓄積にあり,その蓄積過程に,流体自体の持つ記憶効果と,液面近くに溜まっていく残留気泡の影響であると結論付けた.この結果を国際誌Physical Review E.において発表した。野外観測では,浅間火口近傍において、低周波空気振動の連続観測、及び、高周波可聴音の観測を行った。浅間火山では、2009年2月に噴火が発生し、火口底にこれまでなかった噴気口が口をあけた。それ以降、ガスの噴出に伴う空気振動が発生するようになった。本研究によって開発した低周波計測システムと解析手法により、間欠的なガス噴出の発生を正確に検知できた.これにより、噴出前に発生する低周波地震とガスの噴出の時間遅れを定量化することができ、低周波地震の発生機構にも制約を与えることができると期待される。この成果は、地球惑星科学連合2010年大会において、発表する予定である。さらに、ガスの噴出に伴う音の発生機構を理解するために、木管楽器(リコーダー)を用いた室内実験を行った。リコーダーの音の発生機構については比較的よくわかっているが、その振る舞いと火山の振動に、これまであまり注目されていなかった相似性のあることに気づいた。その結果について論文を執筆中である。
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