研究概要 |
2007年の御嶽山の超長周期イベントの波形インバージョン解析を行い,貫入してきたマグマによって山頂直下にある熱水系が暖められ超長周期イベントが発生したというモデルの論文を出版した(Nakamichi, et al., 2009).また,2007年3月の御嶽山小噴火前の地震の震源再決定を行い,メカニズム解を求めた.その結果,震源が集中する領域が2カ所存在することが分かった.1つは山頂直下の海面下0-3kmに,もう一つは山頂から10km北北東の海面下7-9kmにある.火山性地震の数は2007年の1月中旬にピークを迎えており,その期間の震源のメカニズムは高角逆断層が卓越していた.2007年1月中旬に御嶽山の直下の深さ5kmあたりまでマグマが貫入した.貫入マグマの上部にて地震が発生していたことが分かった.また,御嶽山周辺のS波偏向異方性の時間空間変化を調べた.データとしては御嶽山周辺の地殻内地震539個を用いた.その結果,速く伝搬するS波の振動方向は西南西-東北東とほぼ御嶽山の広域応力場と一致しており,その時間変化は認められなかった.山頂直下における正断層や横ずれ断層の震源メカニズムやS波偏向異方性の広域応力場からのズレが現れなかったことは,マグマ貫入がメカニズム変化を与えるのに十分は応力場変化を起こさなかったと思われる.3月下旬の噴火は水蒸気爆発であり,マグマ貫入が止まった後のマグマからの熱,もしくはマグマから分離した水蒸気等の流体によって引き起こされたと考えられる.
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