研究概要 |
本年度は,約170GPaまでの高圧条件下においてナノ多結晶ダイヤモンド(NPD)アンビルを通したレーザー加熱試験を行い,単結晶ダイヤモンド(SCD)アンビルを用いた場合との加熱効率の定量比較,および鉄の融解のその場観察を行った,約100GPaにおける加熱実験において,NPDアンビルを用いた場合,SCDアンビルの場合に比較して有意に高い加熱効率を示し,5000K以上の高温発生が可能であることが分かった(昨年度行った実験の再現性を確認した),これは,SCDよりも一桁低い熱伝導率を有するNPDの断熱性の良さを実証する初めての実験データであり,レーザー加熱NPDACによる超高温高圧発生のポテンシャルの高さを示しているといえる,昨年度までに得られた結果と合わせて,これらの成果を2編の論文としてまとめ,有名国際誌に発表した. 一方,約170GPaにおける2度の実験では,約3500Kまでの高温発生を確認したが,残念ながら2度とも加熱中にアンビルが激しく破損し,それ以上の高温発生は不可能となり,純鉄の融解は観察できなかった.アンビルの破壊は,どちらの場合もベベル部を起点として発生しており,SCDアンビルで一般的に使用されているベベル形状(仕様)は,NPDアンビルでは最適仕様とはならない可能性が示唆された.今後,ベベル形状(特にテーパー角度)を再検討する必要がある.しかしながら,ここまでの技術開発は順調に進んでおり,また鉄の融点についてもレーザー出力に対する発生温度の変化から明瞭に読み取れることを繰り返し確認しており,今後はその手法をより高圧領域へ応用し,広い圧力領域において鉄の融解温度データを収集したい. また,アンビル材としてのNPD自身の硬度,靭性の向上(高品質化)および,パルスレーザーを用いた形状加工特性についても基礎研究を進め,こちらも3編の論文として国際誌に発表した.
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