研究概要 |
本年度は,キュレット径100,150μmのベベル付のナノ多結晶ダイヤモンド(NPD)アンビルを用いた~200GPa超の圧力領域におげる高温発生を目指して,放射光施設SPring-8における実験を行った.その結果,110~120GPaにおけるレーザー加熱では4000Kを超える高温発生に成功し,X線回折から鉄の溶融(回折線の強度の著しい減少)を観察することができた.一方,150GPaを超える圧力条件では,加圧中もしくは~2000K程度の加熱中にアンビルが激しく破壊され,安定した高温発生を行うことは不可能であった.具体的には,昨年度の結果を参考に,アンビルのベベル部のテーパー角度を10度から7度に変更して繰り返し実験を行ったが,結果の改善には至らなかった.NPDアンビルではキュレット径を100μm以下と小さくした場合,キュレット先端への応力集中が顕著になり,その結果,150GPa超の圧力領域(かつ特に高温条件下)でアンビル先端の塑性変形が進み,破壊へとつながると考えられる.これら一連の実験に使用したNPDアンビルは,ナノダイヤの粒径が100~200nmとオリジナルのもの(ヌープ硬度~140GPa,Irifune et al., 2003)よりも5倍~10倍程度粒径が大きく,硬度および靱性が低い可能性が考えらえる.現在出発物質の厳選によるNPD微細組織のコントロールを試験しており,近い将来より高硬度,高靱性のNPDアンビルを作成することは可能であるといえる. 本研究では,100GPaの実験においては,単結晶ダイヤアンビルを凌ぐNPDの断熱効率(高温発生効率)を確認し,X線回折を用いた鉄の溶融温度の決定におけるNPDアンビルの有効性を確認し,2編の論文として報告した.一方,より高圧条件では,応力集中部によるアンビル先端の破壊のため目的としていた超高温発生には至らなかったが,新規硬質材料として広く応用が期待されているNPDのポテンシャルを具体評価し,問題点を明確にした点においては,重要かつ初めての成果であり,今後の展開が期待される.
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