適用例を増やすために、新たに2つの地震について解析を行った。また、今年度は最終年度ということで、結果のとりまとめを行った。 1. 1995年兵庫県南部地震への適用 先行研究で発表されている余震のメカニズム解とすべり分布を使用し、兵庫県南部地震の震源域における本震発生前の絶対応力場を推定した。推定された本震発生前の差応力は5MPaほどであり、野島断層の強度は弱いという結果になった。また、差応力に顕著な深さ変化は確認できなかった。 2. 2009年駿河湾の地震への適用 震源域では北北東-南南西にP軸を持つ横ずれ型の地震が多く発生していることが知られている。一方、余震では逆断層型が約半数、横ずれ型が2割程度、残りの大半は横ずれ型と逆断層型の中間型のものであった。余震のメカニズム解の空間分布をみると、横ずれ成分を持つ余震を取り囲むように逆断層型の余震が発生している傾向がみられた。すべり分布を導入した絶対応力場推定には至らなかったが、震源域は本震による応力変化の影響を受けて応力場に変化が生じたことが予想される。 3. まとめ 助成期間中に4つの地震(1995年兵庫県南部地震、2007年新潟県中越沖地震、2007年能登半島地震、2009年駿河湾の地震)について調査を行った。どの地震でも本震発生後、最大主応力の方位に有意な変化は確認できなかったが、逆断層場から横ずれ場、またはその逆の変化が確認された。差応力が推定されたのは兵庫県南部地震と新潟県中越沖地震の震源域で、それぞれ5MPa程度、10HPa以上であった。新潟県中越沖地震の結果についてはEPS誌に掲載された。
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