地球史におけるマントルの大規模上昇プルーム、及び、大規模上昇プルームに起因するマントル内の特徴的な流れのモード(プルームモード)の発生メカニズムを解明するため、大陸リソスフェアを考慮した三次元球殻内マントル対流の数値シミュレーションを行った。今年度は、以下の二つのアプローチで研究を実施した。 1. マントルに対して空間的・時間的に固定された高粘性の大陸を設置したモデルを用いて数値シミュレーションを行った。大陸の存在によってマントル内に流れの再編が起きる。その結果、CMBから大陸下に発生する上昇するプルームによって、大陸内に最大で90MPa(この値はモデルに依存する)の伸張応力場が発生することが分かった。これは上昇プルームによって大陸が分裂するための十分な応力状態である。大陸とマントルとの熱的相互作用だけではなく、大陸内の応力状態に注目した研究はこれまでに世界で例がない。 2. 大陸の移動を自己矛盾なく実現するマントル対流基礎モデルの構築を開始した。今年度は、まず、大陸の移動を数値拡散なく正確に解くための粒子法ベースの並列計算アルゴリズムの開発を行った。マントルと大陸のレオロジーや物性に関して現実的なパラメータを用いて予備的な計算を行ったところ、超大陸の自発的な分裂、超大陸下の温度上昇、大陸縁辺での海洋プレートの沈み込み、約5億年後の大陸同士の衝突、大陸の衝突帯の形成-など、ウィルソンサイクルの大部分を再現する計算結果が得られた。変形と移動が可能な大陸をもつ三次元マントル対流モデルの開発は世界で初めてである。この新しい数値モデルを用いることにより、将来、地球史における大陸リソスフェアとマントル対流との熱的・力学的相互作用の歴史や大陸移動のメカニズム、地球表層運動に起因する大規模上昇プルームの発生メカニズムなど、地球内部ダイナミクスにおける重要な未解決問題が解明されることが期待される。
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