2004年9月の紀伊半島南東沖地震の発生以降、紀伊半島沖ではトラフ陸側斜面において低周波地震活動が活発化したことが陸上の地震観測から指摘されている。また短周期海底地震計により、低周波地震とほぼ同時刻に2-8Hz付近にスペクトルピークを持ち数分間継続する微動現象が観測された。これらの現象は地震発生帯上限付近の特徴的な活動であるが、詳細な地殻構造との関連は不明である。そこで本研究では、これまでに南海トラフで行われてきた短周期型海底地震計を用いた自然地震観測のデータから微動現象を検出し、その発生位置を明らかにすると共に、海底地震計記録から推定される微動源の分布と、陸上の広帯域観測網によって観測されている低周波地震の震源モデルとを比較し、南海トラフで発生している低周波地震や微動現象の震源像の解明を行う。本年度は、予備的な解析で得られた2-8Hz程度に強いエネルギーを持ち、継続時間が数十秒から数分に達するという低周波微動の特徴に基づき、2001年以降に南海トラフ沿いの海域(紀伊半島沖、四国沖)で実施した海底地震計観測によって得られた地震計記録から、低周波微動の検出を行った。その結果、2003年と2005年に紀伊半島沖で実施した観測の際に低周波微動が記録されていることが分かった。このうち、海底地震計の観測網内で発生していると考えられる2003年の微動活動について、波形のエンベロープ相関から微動の発生源の推定を行ったところ、低周波微動の震源は分岐断層と呼ばれる付加体内部の逆断層浅部に集中していることが分かった。微動活動はクラスター状に分布しており、各クラスターの活動は1日から2週間程度の比較的短期間に集中している。以上の結果から、これらの低周波微動は付加体内部の逆断層の間欠的な活動を示唆していると考えられる。
|