研究概要 |
近年、陸上の広帯域地震計による観測から、紀伊半島沖から日向灘にかけての南海トラフのトラフ軸周辺で超低周波地震と呼ばれる、周期約10秒の信号が卓越する特徴的なイベントが発生していることが指摘されている。これまでの本研究により、周期2-8Hz付近に強いエネルギーを持ち、継続時間が数十秒から数分に達するという低周波微動イベントが震源近傍に設置された短周期海底地震計によって観測されている事が示されている。但し、これらの低周波微動イベントは陸上の観測網では検知できない小規模なイベントであり、陸上および震源近傍の海底で同時観測されたイベントはなかった。2009年3月に紀伊半島沖で活発化した低周波地震活動の際には,複数の広帯域海底地震計によって震源近傍における波形記録が得られた。広帯域海底地震計によって観測された超低周波地震は、従来陸上の広帯域地震計で観測されていた周期数十秒の低周波成分に加えて、短周期海底地震計で観測された低周波微動と同様に数Hz程度の高周波成分も含んでいた。但し、10Hzを超える高周波成分は殆ど含まれていない。これらの記録について、目視により信号の立ち上がりを検測すると共に、低周波微動と同様にエンベロープの相互相関から震源決定を行った。決定された震源は付加体先端付近に集中している。広帯域海底地震計の波形解析により、超低周波地震の震源メカニズムが低角逆断層であると示されていることと合わせ、沈み込み帯浅部の断層と超低周波地震活動が深く関係している事が震源近傍での観測により、改めて示された。
|