研究概要 |
大地震発生時には,断層が高速(>1m/s)ですぺるために,断層面上で急激な摩擦発熱が生じる.この発熱による断層内物質の物理化学特性の劇的な変化に伴って,断層が著しく弱くなることが近年明らかとなってきた.しかし,このような地震時の動的すべり現象を検証するための摩擦実験は,技術的な問題から含水条件下でおこなうことがこれまで困難であったそこで本研究では,含水条件下で地震性の高速すべり運動を再現できるように試験機を改良して,動的すべり挙動に対する(1)水の力学的な効果(摩擦発熱に伴う間隙水圧の変動)と,(2)水の化学的な効果(摩擦発熱によって促進される断層物質と水の固波間化学反応)を実験的に明らかにすることを試みた. 平成20年度は,高速摩擦試験機用の小型圧力容器の設計及び作製をおこなった.その結果,含水条件下において断層が高速ですべる時の力学的性質,間隙水の化学組成の変化,断層面から放出されるガス,間隙水圧および温度を系統的に測定できるシステムを組み上げることに成功した.平成20年度はまず,花崗岩とダナイトの試料を用いて高速すべり時に放出されるガスの測定を試みた.特に,天然の地震断層からも観測されている水素に注目した.その結果,エネルギー的にはマグニチュード1以下の地震においても,単位面積当たり数10ppm以上の水素が発生することが初めて明らかとなった.また,水が存在すると水素の発生量が増える傾向も確認された.平成21年度は,間隙水の動的すべり挙動に対する力学的・化学的効果を様々な岩石を用いて系統的に調べていく予定分ある.
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